【専門家コラム】動物性タンパク質VS植物性タンパク質: どちらのタンパク質が筋肉量の増加により効果的か?【専門家コラム】動物性タンパク質VS植物性タンパク質: どちらのタンパク質が筋肉量の増加により効果的か?

【専門家コラム】動物性タンパク質VS植物性タンパク質: どちらのタンパク質が筋肉量の増加により効果的か?

解説者:管理栄養士 井上希恵

植物性タンパク質や動物性タンパク質が筋肉量にどのような影響を与えるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、タンパク質のアミノ酸組成・消化吸収率・栄養価等の角度から、動物性プロテインと植物性プロテインの違いについて解説します。

 

1.タンパク質の基本概念

タンパク質はアミノ酸で構成されており、これらのアミノ酸は、筋肉や体内のさまざまな構造を作り出す基礎となる成分です。
また、タンパク質は大きく分けて動物性タンパク質・植物性タンパク質の2種類があります。
どちらもアミノ酸を摂取できますが、それらの組成や効果は異なります。

 

2.アミノ酸組成

動物性タンパク質 

動物由来のタンパク質(肉、魚、乳製品、卵など)のほとんどは、体内で合成できない9種類の必須アミノ酸を多く含んでいるためアミノ酸スコアが高く、良質なたんぱく質と言えます。
特に、動物性タンパク質に含まれる特定のアミノ酸(例えばロイシン)は、筋肉の合成と修復に非常に重要です。これにより、動物性タンパク質は筋肉量の増加や維持に特に適していると言われています。

※アミノ酸スコア・・・アミノ酸の含有バランスの指標

植物性タンパク質

植物由来のタンパク質(豆類、穀物、ナッツ、種子など)は食物によって一部の必須アミノ酸が不足しているものもあり、アミノ酸スコアは低いものが多いですが、食物繊維を多く含み、脂質が少ないことが特徴です。
異なる植物性タンパク質を組み合わせることで(例えば豆類と穀物の組み合わせ)、必須アミノ酸を摂取することができます。

 

 3.タンパク質の消化吸収

動物性タンパク質

動物性タンパク質の消化吸収率は通常高く、研究によると約90%99%の消化率を示しています。
これは、体内で効率的にアミノ酸が吸収されることを意味します。
この高い消化率は、筋肉の修復や成長を促進する上で役立ち、特に運動後の筋肉機能の回復に重要です。

植物性タンパク質

植物性タンパク質の消化吸収率は相対的に低く、70%90%程度です。
また、植物性タンパク質にはフィチン酸(phytic acid)のような抗栄養素が含まれることがあり、
これがタンパク質の吸収に影響を与える可能性があります。
しかし、適切な調理や加工方法を通じて、植物性タンパク質の消化率を向上させることもできると言われています。

 

 4.栄養価とその他の健康効果

動物性タンパク質

動物性タンパク質は、ビタミンB12、鉄、亜鉛などの豊富な栄養素を摂取することができます。
これらは筋肉の合成や全体的な健康維持に必要な重要な栄養素です。
ただし、動物性タンパク質の過剰摂取は、腎臓への負担増加などいくつかの健康問題と関連する可能性があると言われています。
そのため、個人の健康状態とニーズに応じて、適切にタンパク質の摂取量を調整し、過剰摂取を避ける必要があります。

植物性タンパク質

植物性タンパク質は、食物繊維やフィトケミカル(Phytochemicals)(カロテノイド(carotenoids)、フラボノイド(flavonoids)、ポリフェノール(polyphenols)など)を多く含んでおり、全体的な健康レベルを向上させる助けとなります。食物繊維は腸内の健康に有益で、筋肉の回復や運動によって引き起こされる酸化ストレスの軽減に働きかけると言われています。

一日に必要なたんぱく質は、動物性・植物性合わせて、18~49歳は、摂取エネルギーの13~20%、50~64歳は14~20%、65歳以上は15~20%が理想とされており、推奨量は、18~64歳の男性は一日65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は一日50gとなっています。(日本人の食事摂取基準2020年版)
動物性たんぱく質の過剰摂取を避けるためにも、植物性たんぱく質とのバランスを心掛け、良質なたんぱく質の摂取を目指しましょう。

 

 5.総合的考慮

筋肉量を増やす過程において、タンパク質の質と量の両方が重要です。
動物性タンパク質はその高い消化吸収率とアミノ酸組成により、筋肉量増加の効果的な供給源と広く認識されています。しかし、植物性タンパク質も適切な食事管理と栄養補給を通じて、同様の効果を達成することが期待できます。

推奨事項:

  1. 多様化された食事: 最良の結果を得るためには、動物性タンパク質と植物性タンパク質を組み合わせることをお勧めします。これにより、全ての必須アミノ酸を満たすだけでなく、全体的な栄養素の摂取を増加させることができます。
  2. タンパク質摂取量の管理: 筋肉増加のためには、毎日の総タンパク質摂取量を確保することが重要です。一般的には、トレーニングを行う人は体重1キログラムあたり1.62.2グラムのタンパク質を摂取する必要がありますが、具体的な量は個々の運動強度や目標に応じて調整することができます。
    (参考資料:JISSN
  3. サプリメント: 植物性タンパク質の摂取量が少ない場合は、プロテインパウダー(例: 大豆タンパク、エンドウタンパク、米タンパクなど)を使用して不足分を補うことをオススメします。

 

総じて、動物性タンパク質は筋肉量の増加において一定の利点を持っていますが、
食事の組み合わせと適切な栄養管理をすることで、植物性タンパク質も同様に筋肉の成長と健康を効果的にサポートすることができるでしょう。動物性たんぱく質と植物性たんぱく質は1:1の割合で摂取することをお勧めします。パランス良く摂取して、良質なたんぱく質を摂取しましょう。