【専門家コラム】L-グルタミンとはどんな成分? 「グルタミン/グルタミン酸」の違いについて解説【専門家コラム】L-グルタミンとはどんな成分? 「グルタミン/グルタミン酸」の違いについて解説

【専門家コラム】L-グルタミンとはどんな成分? 「グルタミン/グルタミン酸」の違いについて解説

解説者:管理栄養士 井上希恵

L-グルタミンとは?

L-グルタミンは、体内でさまざまな重要な機能を果たすアミノ酸の一種です。

アミノ酸は、タンパク質を構成する基本的な要素であり、タンパク質は筋肉、臓器、肌、髪、爪などの

体組織の維持に不可欠です。

L-グルタミンは解糖系及びクエン酸回路の両性代謝中間体から合成できるため、栄養学的には非必須アミノ酸とされています。しかし、特定の状況(怪我、ストレス、病気など)では、体内での合成量が

不足することがあり補充が必要です。(参考文献: 日本食品標準成分表2020年版)

 

L-グルタミンの主な機能と効果

1.筋肉の修復と成長

L-グルタミンは、筋肉組織の主要なアミノ酸の一つで、特に筋肉の修復や成長に関与します。

運動後や手術後、怪我の回復期には、体が損傷した筋繊維を修復するためにL-グルタミンを消費します。

スポーツ選手やボディビルダーがL-グルタミンのサプリメントを使用するのは、この効果を期待してのことです。

2.免疫機能のサポート

L-グルタミンは、免疫系の細胞のエネルギー源としても機能します。

ストレスや感染症にさらされると、体はL-グルタミンを消費しやすくなり、補充が必要になります。

いくつかの研究では、L-グルタミンサプリメントの摂取が免疫機能を強化し、感染症の予防に役立つ可能性が示唆されています。

3.ストレスの緩和と精神的な健康

L-グルタミンは、神経伝達物質であるグルタミン酸およびGABA(ガンマアミノ酪酸)の前駆体でもあります。

これらは脳内で興奮性および抑制性のバランスを保ち、ストレス緩和や精神的な安定に関与しています。

L-グルタミンの不足は、ストレスや不安感を増幅させる可能性があるため、適切な補充が推奨されることがあります。

 

副作用と安全性

ヒトは通常グルタミンを含むタンパク質を食品から多量栄養素として摂取しています。

摂取したグルタミンは、細胞内タンパク質の連続的な代謝に利用され、グルタミンが過剰になったとしても、体内で代謝され、蓄積されることはないことから、グルタミンをヒトが過剰に摂取することはないものと考えられます。(参考文献:食品安全委員会)

しかし、高用量で摂取した場合、

頭痛や吐き気、消化不良などの軽度の副作用が報告されています。また、腎臓や肝臓に問題がある人や特

定の病状を持つ人は、過剰なL-グルタミン摂取が悪影響を及ぼす可能性があるため、事前に医師に相談す

ることが推奨されます。

 

グルタミン/グルタミン酸の違い

・グルタミン

グルタミンとは、タンパク質を構成する 20 種類のアミノ酸の一種であり、L-グルタミンとD-グルタミンという2つの形態が存在します。

L-グルタミン
L-グルタミンは、タンパク質合成、免疫機能、消化管の健康など多くの重要な役割を果たします。

サプリメントとして使用される際には、特に筋肉や免疫のサポートが期待されることが多いです。

D-グルタミン
D-グルタミンは、L-グルタミンと似た構造を持つアミノ酸ですが、主にL-グルタミンがサプリメントや栄養補助として注目されています。体内での役割はL-グルタミンほど重要視されていませんでしたが、近年の研究結果によると、D-グルタミン酸が肌内部からの水分蒸発を防ぐ「細胞間脂質」を補給するスイッチをONにする機能があることが明らかになっています。D-グルタミン酸が細胞間脂質を補給することで肌のバリア機能が高まり、うるおいある健康な肌へと導いたと考えられます。
D-グルタミンは肌への有効性が注目されるアミノ酸といえます。(参考資料:資生堂HP)

・グルタミン酸

グルタミン酸は、グルタミンから代謝されるアミノ酸で、神経伝達物質の一つとしても知られています。
特に中枢神経系において、神経細胞の間で情報を伝達する役割を果たします。
興奮性の神経伝達物質として働くため、過剰に活性化すると神経毒性を持つ可能性がありますが、通常は適切なバランスで維持されています。

 

結論

L-グルタミンは、体内の多くの機能に関与する重要なアミノ酸であり、特に筋肉、免疫機能などの健康維

持に役立つとされています。また、特定の状況下では食事やサプリメントでの補充が推奨されることがあります。L-グルタミンの摂取に際しては、副作用のリスクを考慮し、適切な用量を守ることが重要です。

運動後や手術後、怪我の回復期には、筋繊維修復のためL-グルタミンの摂取を心掛けてみましょう。

 

 

 

 

出典
食品安全委員会
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc8_hishiryo5_glutamine_240223.pdf
日本食品標準成分表2020年版
https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kagsei-mext_01110_021.pdf
資生堂
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002085