【専門家コラム】クレアチンとメンタルパフォーマンス【専門家コラム】クレアチンとメンタルパフォーマンス

【専門家コラム】クレアチンとメンタルパフォーマンス

解説者:管理栄養士 井上希恵

クレアチンは、筋肉のエネルギー源となり、運動パフォーマンスを高めることは以前ご紹介しましたが、近年の研究結果によると、筋肉だけでなく、ストレスやメンタルパフォーマンス等、脳の健康にも寄与することがわかってきました。では、どのような効果が期待できるのでしょうか。

 

 メンタルパフォーマンスとは、精神的な能力や状態を指し、思考力、感情、行動力など、様々な要素を含みます。集中力、モチベーション、ストレス管理などの能力を最大限に発揮するために、アスリートの運動パフォーマンスに影響を与える要素の一つです。

 例えば、酸素不足や睡眠不足、過酷なトレーニング等のストレス環境下や、軽度の脳外傷や老化等の特定の慢性的要因により、メンタルパフォーマンスは低下してしまいます。

 

ストレス下での認知機能改善

クレアチンは脳のエネルギー源であるATPの産生を促進し、脳の活動をサポートするのに役立つ栄養素です。クレアチン摂取により脳内のクレアチン量とクレアチンリン酸/ATP比※ は一般的に増加します。またクレアチン摂取は、若い健康な人でも特にストレス下(低酸素症、精神的疲労、睡眠不足等)での精神的な疲労を軽減し、ストレスによる脳の機能低下を抑制し、記憶力や集中力といった認知機能を改善することが近年の研究結果により明らかになっています。試験数はまだ限られているものの、クレアチンは特にストレス下の脳の機能に対して効果を発揮することが期待できます。

※ 筋肉中のクレアチンリン酸とATP(アデノシン三リン酸)の相対的な量を表す指標
比率が高いほど、筋肉は短時間で高強度の運動をより長く持続可能。特に、短距離走や重量挙げなど、瞬発的なパワーを必要とする運動において重要。

 

脳内のクレアチン量

ヒトが消費する総エネルギー量の20%は脳で用いられており、クレアチンはエネルギー供給と神経保護の観点から脳において非常に重要な成分です。
なお、ビーガンやベジタリアンは筋肉中のクレアチン量が非常に低いものの、脳内のクレアチンリン酸濃度は通常の食事をしている人とほぼ同じだったという研究結果もあり、脳内のクレアチン量は食習慣には左右されないようです。

 

まとめ

アスリートにとって、身体的健康ももちろん重要ですが、精神的健康も重要な要素です。
クレアチンの効果には個人差があり、研究結果も一律ではありません。また、ストレスの種類や程度、摂取方法などによって、効果に違いがありますが、高い運動パフォーマンスを発揮できるよう、疲れを感じる前に、意識的にクレアチンを摂ることによって、疲労回復、メンタルケアを心掛けてみましょう。

 

 

参考:
一般社団法人日本スポーツ栄養協会SNDJ 
https://sndj-web.jp/news/001348.php